その495 ハンマークラヴィーア 2019.12.26

2019/12/26

 小山実稚恵さんのリサイタルを聴きました。
今までずっと生の演奏を聴くチャンスがありませんでした。
多彩なプログラムで演奏された12年間24回のシリーズも終わってしまい、
比較的最近のCDであるバッハのゴールドベルグ変奏曲では、円熟味の増した演奏が聴かれて、
やはりライブでお聴きしたいと感じたことでした。
 
 そんな折2019年春から新たなシリーズを始められて、先月大阪で聴くことができました。
日曜午後の演奏会なので日帰りできるのもうれしい。
曲目、前半はモーツアルトの「デュポールのメヌエット主題による9つの変奏曲」と「ソナタ第13番変ロ長調」。
冒頭に小山さんのお話が少しあって演奏が始まりました。
モーツアルトはとても軽やかで心地よい音色、あまりに美しく響くピアノと、
お昼をがっつり食べてしまったのが相乗効果を発揮して、つい眠ってしまいました。
申し訳なかったのですが、うまくないピアノでは眠りに誘われません。
 
 休憩をはさんで後半はベートーヴェンのピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」。
ハンマークラヴィーアとは、簡単に言えばベートーヴェンの時代のピアノのこと。
新しいピアノを贈られたベートーヴェンが、「よっしゃ」と作曲したのがこのソナタです。
バリ~ンとした出だしの和音、音にしっかりした芯があって、どこまでも響いていくような第一楽章。
ベートーヴェンのイメージからは意外なメランコリーがたっぷりの第三楽章、
そして壮大、複雑なカノンが渦巻く渾身の第四楽章。
 
 どれも素晴らしかったです。
飛行機で大阪から帰ってもう何日もたちますが、まだ感動が続く。そんな演奏会は滅多にありません。
 
 演奏会のパンフレットで、小山さんのインタビューに
「演奏会まで1か月あるなら1か月間の練習、1週間しかないなら1週間で
こうしようとスケジュールを組み立てて、、、。
時間があるからうまくいくとは限らない。」
と載っていました。
これは弾ける方のお話で、何か月あっても足りない、というのが凡人の悩みです。
小山さん、お体を大切に。
益々の精力的なご活躍をお祈りします。